なんでなんだろうね、 こんなに近くにいるのに上手くいかない

恋とか愛とか語るにはあたし達はまだ幼すぎて、
お互いを思う気持ちがこんなにもすれ違っているのに今日もまた笑顔を交わすんだね。



冬の木枯らしにゆらゆらと揺れるマフラーみたいに、逆境を乗りこなす自信も無ければ
降り積もる雪のように白く純粋でも居られない。

突然の空からの訪問者に嬉しそうにする二階堂の隣で あたしはただ表情を隠すようにマフラーに顔をうずめるだけ。
髪の毛に少しずつ積もっていく雪を払うのも忘れて、 白いそれを身に纏って行く街の景色を眺めて、ため息を付いた。



?」



歩みの遅いあたしに漸く気が付いたらしい二階堂が振り返るけどもう遅い。
頭上に疑問符を浮かべてる二階堂を早足であっという間に抜き去って、まだ誰の足跡も付いていない雪を踏む。



「なんだよ」

「…べつに」


嬉しい筈なのに、この状況を憎んでしまう自分が情けない。

本当なら、二階堂はあの綺麗な先輩とこの雪の降る空の下を歩いていたのかもしれない
そう思ったら嫌でも切なくて、何時もより何故か冷たく接してしまう。

意識すればするほど二階堂が遠くなっていく気がして、それが寂しくて




「あーあ、頭真っ白じゃん」


あたしの隣に追いついた二階堂が積もった雪を少し乱暴に払い落として笑う
その綺麗な指が自分に触れたんだ、なんて考えるのも嫌で、お礼すらもおざなりにしてまた早足で歩き出す。


「転んでも助けてやらねーぞ」
「別に、二階堂に助けてもらわなくったって自分で立ち上がれますからお構いなく。」
「素直じゃねーなー」
「悪かったね」



だってまだあたし子供だもん。
二階堂が大好きなあの先輩みたいに大人じゃないし、綺麗じゃないし、素直でもない。



何気ない仕草でも目だけは貴方を自然と追いかけていて、それに気付いた時にはもう好きだった。
ほんとはもう気付いてるのに、言葉に出来ない臆病な自分がいるだけ。



「明日も雪降るかなー」

「どうだろうね」

「先輩、雪が好きらしいんだよね」

「ふーん」




じゃあ、明日はきっと晴れるよ
そう言ったら、二階堂はあたしの気持ちに気付いてくれる?






貴方を幸せにしたもの




(2007.12.12 Alice)