ああ、 あつい  あつい。


カレンダーの文字はまだ5月なのに僕の周りだけまるで真夏の日照りのよう。
耳の横を通る汗の粒がTシャツを濡らして気分が悪いし、 じとりとする掌は君にも嫌われてしまってまさに泣きっ面に蜂だ。


僕の手から逃れていったその日に焼けていない白い指はアイスキャンデーを大事そうに捕まえていて、 恨めしいやら羨ましいやら色々な感情が入り混じる目線で睨みつけてみる。
(僕の熱視線でどろどろに溶けてなくなっちゃえばいいのに)


小さな一口で少しずつ小さくなっていくそれと、アイスキャンディーの水分に 潤されていく君の唇を交互に見詰めて、 それから意地悪なくらいに僕の頭をじりじり照らす太陽を見て溜息。
(このままじゃ僕がどろどろに溶けてなくなっちゃいそう)


僕の隣で同じように太陽に照らされてるその横顔はなんてことない表情。
僕じゃ君を不快にさせるだけなのに、お前はそんなに役に立って!
暑がるだろう恋人には申し訳ないけど、やっぱり溶けてなくなってしまえ!!






「健永?」



僕の焦げる様な視線に漸く気がついた君が立ち止まって不思議そうに僕を見た。
ああ、もしかしてこれ?なんてその後に笑顔でその食べかけのアイスキャンディーを差し出すもんだから、 思わず頬が緩んでしまいそうになった。




「はい、どーぞ」




「アイスも食べたいけど、ちゃんの唇も冷たくて美味しそう」





キスしてもいい?って彼女が好きそうな"可愛い"顔して迫ってみたら、後ずさり。
欲張り、なんて僕に悪戯に笑うから迷わず、暑さにも溶けてしまわないそれを選んだ



その間にアイスキャンディーがぽたぽた地面に落ちて行って、様を見ろなんて勝利宣言。

ああ、ほんとに今日はあつい  あついね。




(2007.05.31 Alice)